
地域包括ケアにおける訪問介護のこれから

2015年の介護報酬改定から、各地域で本格的に地域包括ケアへの取り組みが始まりました。もっともその温度差は地域によってまちまちで、すでに自治体主体で積極的に地域包括ケアを展開している地域がある一方で、なかなか足並みが揃わず未だサービスとして十分に機能していないところも見受けられます。とはいえ、すでに賽は投げられ、後戻りすることはできません。今後は全国すべての自治体で程度の差こそあれ地域包括ケアが実施されることになります。ではその中で訪問介護事業所はどのような役割を果たすのでしょうか。今後、介護業界で中心的な存在となることが予測される在宅介護分野で、訪問介護事業はどのような位置を占めるのでしょうか。
地域包括ケアの実現は訪問介護の充実が必要不可欠
厚生労働省は地域包括ケアの目標として、「住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるようにする」ことを打ち出しています。そのために地域包括支援センターが中心となって、地域にある介護施設や医療施設と綿密な連絡を取ることや、介護予防に力を入れることなどが求められています。このように書いてきましたが、これだけでは具体的な姿が見えてこない、というのが多くの人の実感ではないでしょうか。実際にすでに取り組んでいる自治体でも、目標を実現するための方法は多様であり、地域包括ケア展開のための具体的な方法が定められているわけではありません。
しかしながら2015年の介護報酬改定によって、国は一定の方向性を示してはいます。その根幹部分に在宅介護へのシフトチェンジがあります。それによって、これまで病院や施設で見ていた要介護者が在宅に戻ることになります。要介護3未満の軽度者だけでなく、3以上の中重度の要介護者も今後は在宅での介護が基本線となってくるでしょう。
当然訪問介護にはこれまで以上に高いスキルが求められるようになります。家事や調理といった生活支援中心だったヘルパー事業所は淘汰され、入浴介助や排泄介助といった身体介助を中心とする事業所でなければ生き残れない可能性が高まっています。また、医療的ニーズの高まりも予想されており、今後は訪問介護員の喀痰吸引研修なども進められることでしょう。
労働生産性と介護技術の向上が経営効率の改善に繋がる
地域包括ケアの推進によって、ヘルパー事業所が淘汰されるのは間違いありません。それに加えて、介護保険財政が悪化している状況もあります。現在の財政状況と今後の要介護者の増加率を考えると、今後も介護報酬が上がることは考えにくいでしょう。訪問介護事業所は今後、収入減と身体介助が得意なヘルパーの確保に奔走することになりそうです。
このような状況下では、少ない人員で効率的な仕事を行うことが求められます。対策としては2点が考えられます。1点目は現在いる訪問介護員のスキル向上を図ること。もう1点は最先端技術を積極的に利用することです。
1つ目の点は国によっても積極的に推し進められている、介護士のキャリアパス制度とも密接に関わってきます。特定のキャリアパス要件を満たすことで、介護職員処遇改善加算を算定することができますから、給与のアップが見込め、高給によって新たな人を呼び込むことが可能になります。これからは間違いなく、人材育成を行っている事業所とそうでない事業所では明暗が分かれることでしょう。
2点目は最先端技術の活用です。IOTと呼ばれる技術を有効に利用すれば、少ない人員で効果的に仕事を行うことも可能になります。具体的には人感センサーを利用して認知症高齢者の徘徊を早期発見したり、遠隔操作で室温を調整して熱中症を事前に防いだりといった利用法が考えられています。すでにいくつかの事業所では取り入れられており、一定の効果を上げているようです。マンパワーに頼る介護は限界にきており、今後このような動きはますます広がっていくのではないでしょうか。
収益性を高めつつ地域貢献をする視点が重要
2018年の介護報酬改定に向けて、訪問介護事業所が置かれている状況はますます厳しくなっていくことが予想されます。もっともピンチはチャンスでもあります。これまで人材育成に注力してきた事業所にとって、この流れは追い風といえるでしょう。これから人材育成に力を入れる事業所にとっても、決して遅すぎることはありません。離職率の高い介護業界では人材の育成は後回しにされがちですが、その分だけ他の事業所と差をつけやすい点だといえます。
2025年に向けて大改革が行われている最中の介護業界で、上手く潮流に乗ることができれば、今後数年、数十年に渡って安定した経営を行うことが可能になるでしょう。そのためには単に収益のみを見るのではなく、地域貢献の視点が欠かせません。社会福祉法人の巨額の内部留保金が指摘され問題になったように、利益をどのように地域に還元しているかが問われる時代です。自社の利益を考えるより先に、地域住民の利益を考えてみましょう。そうすることで結果として自社の利益も増大することが、社会福祉を生業とする事業所にとって、最上の結果といえるのではないでしょうか。
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