
介護職員の処遇改善加算Iへ向けたキャリアパス要件3とは

2017年4月より、介護職員の処遇改善加算に新たに1段階が追加され、合計5段階になりました。新たな処遇改善加算1を取得するためには、これまでのキャリアパス要件の1と2を満たすだけでなく、新たに追加されたキャリアパス要件3をクリアする必要があります。処遇改善加算1を取得することは事業所にとって重要です。しかし、それだけでは他事業所と差をつけることは難しく、また離職率の低下にもつながりません。加算のためだけでなく、介護職員のモチベーションアップにつながるキャリアパスの仕組みづくりについて考えてみましょう。
キャリアパス要件3の概要
新たに追加されたキャリアパス要件3の内容は次の2点に要約されます。1つ目が一定の基準に基づいて定期的に昇級を判定する仕組みを設けていることです。「勤続年数や経験年数に応じて昇給する」「資格の取得によって昇給する」「人事評価や実技試験の結果によって昇給する」のいずれかに該当することで、一定の基準を満たしたと判断されます。2つ目が根拠規定を就業規則等の明確な書面で整備し、すべての介護職員に周知していることです。
この概要をみてもわかることですが、キャリアパス要件3は条件を満たすのが難しいものではありません。勤続年数による定期昇給を取り入れている団体は多く、当然その内容は就業規則に明記されています。介護老人福祉施設を運営する社会福祉法人などは、上記の基準をすでに満たしているケースがほとんどでしょう。つまり、新設された処遇改善加算1は、これまでのキャリアパスの仕組みを継続したままでも簡単に算定できる加算だといえます。
特別な対応をしなくても新しい加算を取得できることは事業所にとっては朗報となります。介護職員にとっても新しい加算で給与アップを期待することができます。しかし、これまでのキャリアパス制度が不十分だと感じている介護職員にとっては、失望の種となりかねません。仕事の質や評価と関係のない昇給は、時に人のモチベーションを低下させます。事業所は新設された加算を取得するという目先の目的に惑わされることなく、介護職員の仕事ぶりを正当に評価し、給与に反映する仕組みづくりが必要です。
介護職員のモチベーションアップへ
介護職員のモチベーションをアップさせるための仕組みづくりのヒントは、キャリアパス要件3にも記されています。多くの施設が勤続年数や経験年数に応じた昇給を、介護職員のキャリアパスとして取り入れています。これ自体は問題ではありません。問題なのはこれからの介護業界において、これだけでは十分ではないということです。年数による昇給をベースとしたうえに、各個人のがんばりを正当に評価する仕組みがなければ、がんばっている職員ほど労力に対する報酬に乏しくなり、結果としてモチベーションを低下させてしまいます。
こうした状況は多くの業界で起こりうるものであり、介護業界に特有の現象ではありません。しかし、介護業界にとって人事評価はとりわけ重要なものです。一番の理由は介護職員の一人ひとりが自分の仕事の成果を目にすることができず、上司や同僚からの評価によってしか仕事に対する見返りが得られないことにあります。
需要過多の状況にある介護業界では、現場の介護職員が行うサービスの質が利用者の数に与える影響は大きくありません。とりわけ施設においてこの状況は顕著です。結果としてサービスの質が問われない状況が生まれているのです。サービスの質が利益や給与に影響を与えない状況で、質の高いサービスを提供しようというモチベーションを維持するためには人事評価が欠かせません。人事評価が正当に行われない環境では、質の低いサービスが野放しになります。そしてそうした状況に嫌気がさして、高い志を持った介護職員ほど離職してしまうのです。
処遇改善により離職率の引き下げになるか
新しい処遇改善加算が離職率の引き下げになるかどうかは、各事業所の取り組み次第といえるでしょう。2016年度の時点で処遇改善加算を取得している事業所は90%にのぼります。対象を介護老人福祉施設に限った場合、この数字は98%にまで上昇します。新設されたキャリアパス要件3は、施設を運営する社会福祉法人にとって難しいものではありません。そのため取得率が大きく変動することはないでしょう。言い換えればこれは処遇改善加算1を取っていても、他の事業所との差をつけられるわけではないということです。
離職率を引き下げるためには処遇改善加算の取得だけでは十分ではありません。取得することを目標とするのではなく、加算が意味するところを真摯に受け止めて対応することが求められています。処遇改善加算の目的は介護職員の給与アップを図ることだけではありません。各要件をみてもわかるように、介護職員が長く介護業界で働き続けることのできるキャリアパスの仕組みづくりが求められています。
一部の事業所はすでに人事評価の仕組みを整備しつつあります。また、厚生労働省も介護職員の技能を正確に図る手段として、介護プロフェッショナルキャリア段位制度を設けました。この制度を活用することによって評価しにくい介護の仕事を明確に点数化し、評価することが可能になります。介護業界全体で離職率を低下させるためには、こうした取り組みを多くの事業所が行うことが欠かせません。
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