
より安定経営を目指す!訪問介護における特定事業所加算の取得

平成27年度に3年ごとの介護報酬の見直しがなされ、介護報酬は全体として-2.27%の減算となりました。これまでと同様のサービスを提供していても、もらえる金額は減るわけですから、多くの事業所が頭を悩ませていることでしょう。今回の改定は単なる減算ではなく、介護職員の処遇改善や、キャリアパスをきちんと描いている事業所には、相応の加算が得られるところに特徴があります。そのあたりも含めて、今回は訪問介護事業所が、特定事業所加算をとるケースを考えてみましょう。
訪問介護の特定事業所加算の種類と内容
特定事業所加算には、I、II、III、IVがあります。Iは体制+人材+重度対応すべての算定要件を満たしていることが条件で、IIは体制+人材、IIIは体制+重度対応が算定要件となっています(IVについては、少し要件が異なりますので、今回は割愛させていただきます)。それぞれの加算単位数は、Iが所定単位数の20%、IIとIIIが10%となっており、かなり大きな加算ですよね(IVは所定単位数の5%)。では、体制、人材、重度対応の要件をそれぞれ細かく見ていくことにしましょう。
1.体制要件
- 訪問介護員及びサービス提供責任者全員に個別研修計画が策定され、研修が実施または予定
- 次の基準に従ってサービス提供が行われていること
・利用者情報等の伝達・技術指導のための会議を定期的(概ね月1回以上)に開催
・サービス提供責任者からの情報等の伝達、担当の訪問介護員からの適宜報告 - 訪問介護員全員に健康診断等を定期的に実施
- 緊急時等の対応方法を利用者に明示
2.人材要件
- 訪問介護員のうち、介護福祉士30%以上又は介護福祉士、実務者研修修了者、旧介護職員基礎研修課程修了者及び旧訪問介護員1級課程 修了者の総数が50%以上
- すべてのサービス提供責任者が3年以上の実務経験を有する介護福祉士又は5年以上の実務経験を有する実務者研修修了者、旧介護職員 基礎研修課程修了者、旧訪問介護員1級課程修了者
3.重度対応要件
- 前年度又は前3カ月の利用者総数のうち、要介護4・5、認知症 (日常生活自立度3以上)の利用者並びにたんの吸引等の行為が必要な者が 20%以上
特定事業所加算を取得するメリットとデメリット
以上の要件を見ていただくと、特定事業所加算Iを取るのがかなり難しいことがお分かりいただけるでしょう。体制要件と人材要件については、事業所の努力でなんとでもなる部分ですが、重度対応要件については、訪問介護事業所の力だけでは如何ともしがたいところがあります。加えて、認定審査も年々厳しくなっており、要介護度4、5に当たる人は、ほとんどの場合在宅で見るのが困難なケースとなっています。
特定事業所加算Iを取ると、収入が単純に20%増えるというのは大きなメリットですが、一方で加算を取るために必要な労力や、継続して取り続けるための苦労は、かなりのものとなるでしょう。要介護度の高い人を見る苦労だけでなく、介護支援事業所へ重度の人を斡旋してもらうための働きかけといった、営業に近い部分の労力も必要とするからです。また、要介護度の高い人ばかりを介護する負担感から、訪問介護員の離職につながるリスクもはらんでいます。
介護スタッフのモチベーション維持と人材確保の安定性
では、特定事業所加算をとらないほうがよいのか、といえばもちろんそんなことはありません。現実的な視野で物事を見るなら、特定事業所加算IIの取得を目標とすることは、事業所にとっても職員にとっても良いことでしょう。職員の質が向上することで、サービスの質も向上し、利用者の満足度アップも見込めます。その上で、重度の方がたまたま一定数を越えれば、加算Iが取れて儲けもの、くらいに考えておくほうが、無理な事業計画を立てずに済むでしょう。そのために必要なのが、人材育成のシステム作りと、長く働いてくれる人材を揃えること。1.の体制要件でできていない部分がイ.の「各職員の個別研修計画の策定と実施」であり、2.の人材要件に関しては、全く条件を満たしていない、という事業所は多いかもしれません。
人材要件は、そのすべてが長期間働いていることを前提としている、といっても過言ではありません。人材の確保だけでも困難なのに、継続して働いてもらうためには、どのような対策をとればよいのでしょうか?ポイントは介護スタッフのモチベーションコントロール。単に給与面を保証するだけでは、長く続けることはできません。スタッフが仕事にやりがいを感じられているか、目標を見失っていないかなど、各スタッフに合わせた目標設定や、ストレスマネジメントを行うことが大切です。
これらの仕事をサービス提供責任者に任せきりにすることなく、管理者が危機意識を持ってできるかどうかで、同じ数の利用者を抱えている事業者でも、収入が大きく変わることでしょう。人材マネジメントの巧拙が、今後は事業所収入に大きな影響を与えることは間違いなさそうです。
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