
災害時の避難所での感染症対策7つのポイント

災害が起きて市町村から避難勧告が出された場合、住民は指定されている避難所に行きます。避難所では多くの人が集まるため、避難所を運営する立場としては、感染症対策や衛生管理が重要となります。地形や地質、気象などの条件から自然災害が多いとされる我が国では、これまでにも多くの災害を経験してきました。ここでは、過去の経験を教訓に感染対策や衛生管理について、事前に知っておくべき知識やポイントを解説します。
災害時, 感染症対策
1.7つのポイント
災害時に多くの人が集まる避難所では、感染症の対策が必須となります。ここからは、避難所を運営するにあたり、避難所での感染症対策の7つのポイントを紹介します。
1-1.手洗い・うがいの徹底
感染症の多くは口や鼻、目といった粘膜から感染します。細菌やウイルスが付いた手を介して体内に入れてしまうことが多く、手洗いによって防ぐことができます。手洗いをするタイミングは、外出から帰宅したときや食事前、トイレや排せつ処理後などです。手洗いの基本は、流水と石鹸ですが、アルコール消毒やウェットティッシュを加えて使い分けるとよいでしょう。避難所に水道設備がない場合はウェットティッシュとアルコール消毒を出入り口付近や調理場、トイレなどに配置します。共用タオルは使用せず、個別のタオルか、使い捨てのペーパータオルを用意することが重要です。
うがいについては、口の中に付いた細菌やウイルスを洗い流すため、特にインフルエンザなどの呼吸器感染症の対策に効果があるとされています。うがいをするタイミングは、帰宅時や食事の前後、歯磨きができないときなどです。効果的な方法は、はじめは口に水を含んで「ブクブク」うがいをし、口内を洗浄してから「ガラガラ」うがいをして喉の奥まで洗浄することです。
1-2.感染症対策ポスターの掲示
避難所を運営するにあたっては、避難所に集まって来る人たちに、避難所での感染症にかかる可能性や怖さ、感染対策の重要性を理解させることが大切です。そのために、感染症に関する事柄を記載したポスターを掲示することが必須となります。多くの人の目に入る場所や、実際に感染リスクの高い場所に掲示しなければなりません。例えば、避難所の出入り口付近や手洗い場、トイレなどです。これにより感染症に対して理解させ、対策を促すことができます。
1-3.咳エチケットの徹底
感染症は、飛沫感染(咳やくしゃみなどからの感染)によっても人にうつりますので、咳エチケットを徹底することが重要です。咳エチケットには、マスクの着用が効果的で、人との会話をはじめ、調理したり、トイレに行ったりするときにも効果が期待できます。マスクは、咳エチケットだけではなく、口の中の乾燥を防ぐ効果があるとされ、喉の保湿のために安静時や就寝時にも装着することが勧められています。
1-4.共同トイレの衛生維持
避難所のトイレは、不特定多数が利用するため、衛星環境が悪くなりやすいです。感染症の中でも細菌性やウイルス性の胃腸炎は、原因となる細菌やウイルスが感染者の排せつ物や嘔吐物に多く含まれ、衛星環境の悪いトイレから集団感染を起こしやすくなっています。そのため、定期的なトイレの洗浄が不可欠となります。掃除する人は、マスクと使い捨ての手袋などを装着して感染対策をしつつ、掃除することが重要です。
1-5.居住区スペースの確保
避難所は1つの空間に多くの人が集まるため、呼吸器系の感染症が蔓延しやすいといわれる三密(密集・密接・密閉)になりやすいです。三密を回避するためには、人と人との距離を開け、定期的に換気をおこなうことが効果的です。また、1つの空間に人が集まるとプライベート空間がなくなり、ストレスを感じやすくなります。心的ストレスは、免疫機能を低下させ、感染症になりやすくなるため、居住区スペースの確保が重要になります。
1-6.感染症罹患者への対応
避難所を運営するにあたって、感染症羅患者への対応にあたる職員やボランティアスタッフには、手指の衛生とマスクの着用を徹底させます。また、感染症の症状がある人には、従事させてはいけません。避難者に対しては、少しでも体調の変化がみられた場合は、遠慮なくスタッフへ報告してもらうことを徹底します。さらに、医療機関への連絡体制を構築しておくことも大切です。
1-7.食品衛生管理の徹底
避難所は、多くの人が出入りすることから、衛生状況が悪化しやすく、食中毒を起こしやすいです。食中毒は、一般的に梅雨時などに発生しやすいといわれますが、ウイルス性の食中毒は、冬に多く発生しますので1年を通して対策が必要となります。具体的には、調理環境を衛生的にするために、調理器具や食器類の徹底消毒。そして、調理に従事する人には、手洗い・うがいを徹底させ、下痢や発熱、指に傷がある場合は調理させないようにします。食中毒になりやすい生ものは控え、十分に加熱された料理を提供させます。
2.新型コロナウイルスの感染症対策とは
新型コロナウイルス感染症対策は、基本的には、都道府県および市町村の防災担当部局や保健福祉局、保健所などと連携して、体制を確保する必要があります。ここからは、避難所での新型コロナウイルス対策方法について解説します。
2-1.健康な場合
避難者が健康な場合は、手洗いの徹底を促すと同時に、多くの人が手を触れる場所をこまめに消毒します。例えば、ドアノブや手すり、スイッチなどです。トイレについては、汚れが目に見える場合は、その都度、次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、目に見える汚れがなくても1日に3回以上は消毒します。また、トイレの蓋を開けたまま流すとウイルスをまき散らすことになるので、利用者にはトイレの蓋を閉めてから流すように促し、十分に換気するよう掲示します。そのほか、共有物がある場合は、消毒と使用後の手洗いを徹底させます。
2-2.症状のある人がいる場合
避難者のなかに症状のある人がいる場合は、都道府県や市町村の保健福祉局や保健所と十分な連携を取ります。そして、糖尿病や心臓・肺。腎臓などに持病がある人、免疫が低下している人や妊婦などは近づけないようにします。症状がある人や濃厚接触者に対応する場合は、十分に換気をした上で、使い捨ての手袋やマスク、目の防具を着用。使用したマスクは持ち出さず、こまめに手洗いとアルコール消毒をします。洗っていない手で、目や鼻、口を触ってはいけません。トイレなどの多くの人が手に触れる共有部分は、定期的に徹底消毒します。
避難所での感染対策
災害が起きて避難所に来る人たちは、災害に対する不安だけで、いっぱいいっぱいです。それに加えて感染症対策を徹底させるのは、容易なことではありません。また、避難所を運営する側も、通常の災害対策に加え、感染症対策を徹底しなければならず、負担は増えます。しかし、避難所での二次災害は防がなければなりません。ですから、避難所での感染対策をしっかりしましょう。
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