
介護職員への処遇改善のためにできること

介護職員が仕事を辞めるのは、給与だけの問題ではありません。毎年行われている介護労働実態調査によると、給与が問題で離職した人の割合はおよそ6人に1人です。一方で人間関係の問題、事業所の理念や運営方法に対する不満から退職した人の割合は合わせて40%を超えています。働きやすい環境をいかに整え、やりがいを持って仕事に取り組んでもらうことの重要さがわかる結果といえるでしょう。ここでは、「介護職員が生き生きと働くことのできる職場づくりにはなにが必要か」について取り組み例を交えて紹介します。
介護職員処遇改善加算の取得率は?
介護職の賃金を作用する要素のひとつに、処遇改善加算の取得の有無があります。厚生労働省による2016年度介護従事者処遇状況等調査の概要によると、介護職員処遇改善加算を取得している事業所は90%、取得していない事業所のほうがまれな状況です。その中でもっとも加算率の高い加算1を取得している事業所は70%を超えていることから、ほとんどの事業所において給与に大きな差がつかないことが予想されます。
注意したいのはこれが2016年度の数字であるという点です。2017年4月からこれまでの加算1~4の上に新たに1段階の加算が付け加えられました。新しい加算1が増えたことにより、5段階に変更になっています。新設された加算1を算定するためには、新たに追加されたキャリアパス要件3を満たす必要があります。キャリアパス要件3の内容は、一定のルールに基づいた定期的な昇級の仕組みを設けていることです。
新たな加算の追加によって、介護士のキャリアパス制度を事業所内で構築することがより重要視されるようになりました。明確なキャリアアップの仕組みを作ることで介護職員が目標を持って働くことができます。また、加算率の高い処遇改善加算を得ることで、成長した分だけ給与に反映させることも容易になります。処遇改善加算の取得率をみても分かる通り、加算を取るだけでは十分ではありません。取得した加算をいかに介護職のモチベーションアップに活かせるかが、離職率の低い事業所を作るための重要な条件となるでしょう。
職場改善に対する取り組み例
介護は時間帯によって必要な労力が大きく変わる仕事です。施設を例に考えてみます。入居者が一斉に起き出す朝の6~8時は、1日の中でもっとも忙しい時間帯です。業務内容も離床介助や排せつ介助、食事介助と多岐にわたり、多くの人員を必要とします。全員の食事が終わる9時過ぎになると、忙しさはひと段落します。この時間帯にも業務はありますが早朝のように多数の職員を必要とはしません。次に同じ忙しさが来るのは夕食から就寝にかけてです。
このように1日の中でも必要な人員数が目まぐるしく変わるのが介護現場の特徴です。この特徴を踏まえて、介護職の勤務時間もフレキシブルにする事業所がいくつか現れてきました。ある事業所では正社員の働き方を数種類用意しています。その事業所では週の勤務時間は40時間で一定ですが、1日8時間で5日働く人もいれば1日10時間、週4日勤務の職員もいます。どちらも正社員であり給与に違いはありません。別の事業所では2交代制の夜勤のように長時間働く日勤を用意しています。長時間働く日勤帯を作ることで、新たに人を雇わずに忙しい早朝や夕方の時間の人員を増やすことに成功しています。どちらの事業所でも共通しているのは、「介護職員が自分で働き方を決められること」「介護職自身の選択によって現場に負担がかからないようにしていること」です。働き方を多様に用意することで、生活環境が変わっても正社員として働き続けることを容易にしている事例です。
介護者にやりがいを持たせる取り組み例
介護職が隣接職種である医療職やリハビリ職に比べてやりがいを感じにくいのには理由があります。医療やリハビリは治療が目的な一方、介護は生活支援が主な仕事内容であり、明確なゴールを見いだしにくいのです。このような前提を受け入れたうえで、事業所は介護職にやりがいを感じながら働いてもらうための工夫をしなければなりません。
やりがいを感じてもらうためにキャリアアップの仕組みを整備して、うまく活用している事業所があります。この事業所では介護職として数年の現場経験を経た後に、管理職として働くか現場を極めるかを自分で決めることができます。どちらの職種を選んだとしても給与に大きな差はなく、自分にふさわしい職種を自分で選ぶことができる仕組みです。介護業界では数年の現場経験を経た後、現場のリーダーとなりその後ケアマネージャーや生活相談員といった管理職に近い役職へと上がっていくキャリアしかありませんでした。管理職に比べて現場の仕事は下に見られがちであり、どれだけ現場の仕事が好きでも給与のことを考えると管理職にならざるを得ないという状況が生まれていたのです。この事業所の取り組みはそんなキャリアのあり方に一石を投じたといえます。
今後多くの事業所で現場の専門職として働き続けるという選択肢が増えることで、介護職員はこれまで以上に自分の仕事に自身を持って働くことができるようになるかもしれません。
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