
2015年介護保険法改正のポイント(後編)

2015年4月の介護保険法改正について、前編では、これまでの改正内容と今後の方向性を解説してきました。今回の改正では、とくに医療と介護の連携が進められ、「地域包括ケアシステム」の構築と、介護保険財政を支える費用負担の見直しに重点が置かれています。介護事業者の経営戦略に、介護保険法の方向性を正しく把握することは欠かせません。今回は、改正のポイントとおもな改正内容について、詳しく解説します。
「地域医療・介護総合推進法」とは?
2015年の介護保険法改正は、医療・福祉に関わる19の法律と一括改正されました。地域での医療と介護の連携を強化し、「地域包括ケアシステム」を構築するため、関係する法律の整備がおこなわれました。これを「地域医療・介護総合推進法」といいます。
改正のポイント
- 「地域医療介護総合確保基金」の創設
医療・介護事業の連携を強めるため、消費税の増税分による新しい基金が各都道府県に設置されました。 - 「地域ケア会議」の推進
地域ケア会議の設置が、市町村の努力義務として法定化されました。 他職種協働によるケアマネジメント支援をおこない、地域のネットワーク構築を進めます。 - 地域包括支援センターの機能強化
介護事業の質を高めるため、次のような取り組みが強化されます。
・センターの人員体制を増強
・職員研修の充実
・財源の確保
・業務内容の見直し
委託型センターに対しては、市町村の方針に基づく具体的な業務内容を示すことが求められるようになります。また、業務内容や実施状況を報告するなど、行政との役割分担や連携も進みます。
2015年改正のポイントは?
今回の介護保険法改正で、事業者にとって、とくに重要なポイントをご紹介します。
- 利用者負担額が変更に
負担能力のある一定以上所得者の場合、自己負担が1割から2割に引き上げられます。(2015年8月利用分より。新しい「負担割合証」は6月頃に発行予定)
また、高額介護サービス費の自己負担限度額が、月額3万7200円から4万4000円に引き上げられます。これは、一般世帯のうち、医療保険の現役並み所得者がいる世帯のみです。
一方、低所得者の保険料や施設利用料などは、軽減が予定されています。 - 特養ホームの入所条件が厳しく
「特別養護老人ホーム」へ新規入所できるのは、原則として「要介護3」以上の高齢者に限定されます。(軽度でも、特例で認められる場合あり)
すでに入所している人は、この規定から除外されます。 - 予防給付から生活支援サービスへ
新しい「介護予防・日常生活支援総合事業」が、地域支援事業として新設されます。
そのため、要支援者に対する予防給付のうち「訪問介護」と「通所介護」は新事業への移行が決まっています。(その他の「訪問看護」などのサービスは、引き続き予防給付が受けられます)
これまで予防給付のサービスは、全国一律の基準でおこなわれてきました。しかし、新しい総合事業では、住民による活動や、地域のさまざまな主体による生活支援サービスと統合が進んでいきます。
既存の介護事業所によるサービスだけでなく、NPOや民間企業、高齢者自身が担当するボランティアなど、柔軟な取り組みで多様なサービスが提供されることになります。
これからの介護事業者は?
介護保険法改正で「地域包括ケアシステム」の構築が進むにつれ、地域で事業者が中心的な存在となる可能性があります。その際、在宅医療との連携や居宅サービスの充実など、今後の対応が重要になってきます。また、2015年度は介護報酬の改定も行われました。一種類の介護サービスにこだわらず、複合的な他種類の介護サービスを検討することで、事業リスクを避けていきましょう。
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