
介護福祉士国家試験のパート合格とは?導入の背景やメリットを解説

介護福祉士とは、専門的な知識と技術を生かし、介護サービスを利用する人の心身のケアを行ったり、現場で働く従業員の指導・育成を行ったりする職員のことです。
介護現場にとってなくてはならない存在ですが、介護福祉士として働くには介護福祉士国家試験に合格し、登録を済ませなければなりません。
しかし、当該試験は出題範囲が広く、ストレートに合格するのは難しいと言われています。
そこで政府は、介護福祉士を目指す人を後押しする施策として、介護福祉士国家試験のパート合格制度の導入を検討しているのです。
本記事では介護福祉士のパート合格制度の概要や、導入が検討されている背景、導入した場合のメリットについて解説します。
・2025年度より、介護福祉士国家試験の科目を3つに分け、それぞれで合否判定するパート合格が導入される予定
・導入の背景には少子高齢化による介護需要の増加や受験ハードルの高さなどがある
・導入されれば受験の心理的な負担減や人手不足の問題解消、外国人介護人材の増加などを期待できる
2025年度より介護福祉士国家試験のパート合格が導入される予定
厚生労働省は介護福祉士国家試験について、2025年度よりパート合格の導入を検討していることを発表しました。
パート合格とは、介護福祉士国家試験の筆記試験の科目をA、B、Cの3つに区分し、それぞれで合否を判定するルールのことです。ルール導入後は、A・B・Cパートでそれぞれ個別に合否判定を行い、一定の合格水準に達したパートについては、次回以降の試験で2年間受験が免除される仕組みになっています。
もちろん、資格を取得するにはA・B・C全てに合格する必要がありますが、例えばAとBで合格水準に達し、Cのみ不合格だった場合、2年間はCパートのみチャレンジすれば良いことになります。
パート合格導入のスケジュール
政府は2024年5月に、第1回介護福祉士国家試験パート合格の導入に関する検討会を開始しました。以降、同年7月と9月に第2回、3回の検討会を開き、各関係団体からの意見聴取やルールの内容についての議論などを重ねています。
予定では2024年秋を目途にルールを取りまとめ、2026年1月に実施予定の第38回試験からの導入を目指しています。
介護福祉士国家試験のパート合格導入の背景
介護福祉士国家試験にパート合格が導入されることになった背景には、大きく分けて2つの理由があります。
少子高齢化による介護需要の増加
現代日本は少子高齢化が加速しており、介護のニーズは年々高まっています。政府の発表によると、2040年度末までに新たに約57万人の介護人材を確保する必要があると考えられています。
ただ人手が増えれば良いというわけではなく、今後さらに複雑化、多様化する介護ニーズに対応するためには、専門的な知識や技術を有する介護福祉士の養成が必要不可欠です。
その一方、介護福祉士国家試験の受験者はピーク時に比べて大幅に減少しています。最も受験者の多かった第26回(2013年度)は約15万4,000人であったのに対し、第36回(2023年度)の試験の受験者数は約7万4,000人と、ピーク時のおよそ半分に留まりました。
今後も少子高齢化が進むと予測されている現代日本において、介護福祉士のなり手がいない現状は大きな課題となっており、パート合格導入によって受験の利便性を図る措置が求められています。
(参考:厚生労働省 『介護福祉士国家試験パート合格の導入の在り方について』)
(参考:厚生労働省 『第36回介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」』)
受験のハードルの高さ
介護福祉士国家試験の受験者数がピーク時より大幅に減少している理由の一つに、受験のハードルの高さがあります。
受験資格を得るためのルートは複数ありますが、中でも全体の8割以上を占めているのが実務経験3年+実務者研修受講を経て試験に臨む実務経験ルートです。このルートでは実際に介護現場で3年間の実務経験を積む必要があるため、現在進行形で介護事業所に勤務しているケースがほとんどです。
そのため、受験者は働きながら試験勉強を行う必要があるのですが、介護の現場は慢性的な人手不足にあるため、従業員一人当たりの負担は決して少なくありません。その結果、試験勉強との両立が難しく、なかなか受験できないという背景があります。
パート合格の導入により、段階的な合格を目指せるようになれば、働きながら資格取得を目指しやすくなるのではないかと考えられています。
(参考:厚生労働省 『介護福祉士国家試験パート合格の導入の在り方について」』)
介護福祉士国家試験のパート合格導入のメリット
介護福祉士国家試験のパート合格を導入した場合のメリットは3つあります。
心理的な負担の軽減
これまで、介護福祉士国家試験は試験科目群全てにおいて得点し、かつ問題の総得点の60%程度を基準として問題の難易度で補正した点数以上を得点した者を合格者としていました。しかし、試験科目は11科目と多岐にわたっており、一度で合格するのは簡単なことではありません。そのぶん受験者はプレッシャーを感じてしまい、受験そのものを躊躇する人も多くいました。
パート合格が導入されれば、合格したパートに関しては翌年・翌々年の試験が免除されるため、最長で3年掛けて合格することが可能になります。その結果、単年で一発合格しなければならないというプレッシャーが緩和され、受験者の心理的な負担の軽減を期待できます。
受験者増で人材不足の問題解消
パート合格が導入されて受験者の身体的、精神的な負担が軽減されると、働きながら試験に臨む受験者の数が増加することが予想されます。受験者が増えれば、それだけ資格取得者数も増え、介護現場で優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。
その結果、現場の人手不足が緩和され、受け入れ枠の増加やサービスの質の向上などさまざまなメリットが期待できます。
外国人介護人材の増加
外国人が介護福祉士の試験に合格すると、在留資格「介護」を取得できます。在留資格「介護」は在留期間の制限なしに日本で就労できるため、介護福祉士の資格取得を目指す外国人は少なくありません。
しかし、国家試験のための専門的な学習に加え、継続した日本語学習が必要であることから、日本人以上にハードルの高い国家資格と言われています。
パート合格が導入されれば、資格取得のハードルが緩和されるため、外国人の受験者増および合格率の向上が期待されます。少子高齢化が進む現代日本において、外国人介護人材は介護業界の人手不足を緩和する手段の一つとなるでしょう。
(参考:出入国在留管理庁 『在留資格「介護」』)
【まとめ】パート合格は介護業界の人手不足を解消する一手になる
介護福祉士国家試験のパート合格が導入されれば、合格水準に達したパートについて、翌年、翌々年の試験が免除されます。一度で合格しなければならないという心理的なプレッシャーが緩和される他、翌年・翌々年は合格できなかったパートの試験のみに専念できるため、受験へのハードルが下がり、受験者増および資格取得者増を期待できます。
一方で、介護福祉士の専門性や社会的評価の低下を懸念する声も上がっているため、十分な制度の設計や導入後の継続的な改善が必要とされるでしょう。
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